古い家が取り壊され、更地となった区画の真ん中に、井戸ポンプだけが残されていた。
ある日、通りがかると、井戸ポンプの線がつながれており、汲みだされた水がホースから流れていた。
水は何に使われるでもなく、そのまま溝に落ちている。
無人の土地に取り残されたポンプがひとり作動する光景がシュールだ。
まるで家屋敷の復活を予言するかのような。
なにゆえに、更地の井戸ポンプが動かされているのだろう。
井戸は、汲みあげていないと砂が詰まるなどの不具合が生じるのだろうか。いずれにしても何か動かさねばならない理由があるのだろう。
それにしてもすごい水量だ。バケツなら10秒くらいで満杯になるのでは。
手で触ってみると、ちょっと冷たいが、そんなに冷たいというほどではなかった。
ここは野洲川のデルタ地帯の砂地で、地下水は豊富な土地柄。琵琶湖博物館でみた展示によると、滋賀県で水道網が完成したのは、大津の市街地など一部を除くと、意外に新しくて昭和40年代前半という。それ以前に建った家には、井戸が標準装備だったようだ。
それにしても、湧き出る豊富な地下水をみて、自宅でも掘ってみたいと、思いを新たにした。