2023年03月05日

西宮貝類館

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西宮貝類館

兵庫県の西宮貝類館に初めて行った。
国内外の貝類2000種類を展示する施設ということで、貝類ファン必見の施設ではないだろうか。
以前から訪れてみたいと思っていたが、場所が駅から離れた埋立地にあり、躊躇していたが、早春のこの日に車で行ってみた。
無料の駐車場が3台分あり、日曜日でも停めることができた。
建物は貝類をイメージしているのか、二枚貝の水管、または巻貝の殻口を思わせる回廊に吸い込まれるように入った脇に入り口があった。
安藤忠雄設計で、阪神大震災から4年後の建立だ。

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入口の展示

玄関の展示は大規模で迫力があった。
世界の貝類を一目で見れるように展示してあった。

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貝拾いも(持ち帰ってはいけない)

台の上は貝類が散りばめてあって手に取ることができる。
貝殻でできた浜のようだ。来館者の子どもが夢中になって遊んでいる。これはいいぞ。

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ピンクガイ

大きいやつもあるぞ。ピンクガイは、巨大なつやつやした唇のようで、ずっしり重い。

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頭足類であるアオイガイ

頭足類のアオイガイも。これは、殻のあるタコイカ類である。
昔、幼少時に鳥取県の母方の祖父母の家に飾られていた。
3〜4歳の頃、古い家屋の薄暗い部屋の中、棚のガラスごしに白い殻が浮かび上がっている映像が断片的に頭の中に残っている。
その数年後、小学校の高学年となって貝拾いに目覚め、海辺の祖母の家に貝拾いを目的として通うようになった。あの飾ってあった殻はどこにしまってあるの、と祖母に尋ねたら「家を新しくしたときに割れちゃって捨てた」と明かされ、がっかりしたことを思い出す。
浜で打ち上げられていたのを拾って来たものだというが、あれから約40年、浜辺をうろうろしているが、いまだにアオイガイの殻を見つけたことはない。

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採取地が記載された標本箱

館に展示の貝類、採取地はフィリピンが多かった。
国内では沖縄か、本州では潮岬の周辺。
やはり貝は、南洋に行くほど色・形が派手になっていく。
北は北で、北方産貝類の美しさの基準があるとは思うのだが、どうしても南方の浜で貝拾いをしたほうが楽しいような気がする。
そういうわけで貝拾いが自分の楽しみになるとともに、南方の浜へのあこがれを抱くようになった。
いつかヒマになったら日数をかけて鹿児島の大隅・薩摩半島とか、浜が広そうな種子島とかの海岸を数日かけて回って誰にも邪魔されず貝拾いに没頭したい。このようなことを思って忙しい日々の慰めにしていたものである。
ここ数年は中断しているが、冬場の恒例となっていた貝拾い活動では、在住の滋賀県から主に伊勢方面を目指し、志摩からさらに南方に進み、ある年には三重県境を越えて和歌山県の新宮まで至ったが、展示を見る限り貝類採集はやはり、潮岬にとどめを刺すようだった。
潮岬まではさすがに遠く、滋賀からは泊りがけで行くことが求められるが、いつかは目指してみたい本州最南端の貝の「聖地」。

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角が生えた二枚貝も

世界の珍奇な貝類もあり、生物の不思議をいろいろと思う。

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螺鈿フィッシュ

アワビなどの殻の内側の光沢を板状に薄く剥いだものを張り合わせる螺鈿細工も、私が好きな工芸だ。
これは螺鈿で魚を形作った工作だった。
堀江謙一さんのヨットも展示されている。大洋の荒波に耐える堅牢な室内は、巨大な貝殻を思わせた。

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貝殻が並ぶ内部

貝に魅せられた関西の研究者やコレクターによってつくられたコレクション。
カンブリア紀の生物爆発のように、1990年代日本では全国各地で博物館の爆発的な開館ラッシュがあった。ここ兵庫では、阪神大震災の復興事業が取り組まれ、貝類の殿堂が誕生した。
貝殻は、中の軟体動物が分泌した骨のようなものだが、コレクターにとって興味があるのは貝殻で、中の軟体は余分なものとして忘れられる。ビックリマンチョコとシールの関係に例えられようか。
貝を採取するとき、貝殻の真の形・色の鮮度を得たいと思えば、生きた状態で捕獲し、中の肉を煮るなりして殺して取り出すのが本筋だとは思うのだが、生きている貝を殺すにはしのびず、また、浜辺に漂着したのを拾うほうが、生きていたものが死んで海によって浄化され、純粋な「貝殻」となっているような気がする。
静かな館内にしばし時間を忘れて見入った。



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2020年02月09日

貝殻を訪ねて2020

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南伊勢の海浜(午前10時半ごろ)

異例の温かさだったこの冬にとつぜんの積雪。
水辺活動オフシーズンである冬期の貝拾い、立春もすぎたこの日、行ってみようかなと思って朝起きたら、滋賀県南部は雪に覆われていた。
峠はどうなっているのか危ぶまれもしたが、三重県側は晴れという予報。気温は0度よりいくぶん高いためか路面の雪も解けていた。


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滋賀県南部、突然の積雪(午前7時半ごろ)

ただ行ってみると、降雪ゾーンは県境をこえても終わらず津あたりまで銀世界で、松阪付近からようやく黒や緑色の田園がひろがってきた。
出発から約3時間後、南伊勢の南張浜では冒頭の写真のような青空だったが雲も浮かぶ。

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堤防から浜を見下ろす

風はかなり強く、沖合には冬の筋状の雲も見える。
浜の北西側は山地で、北西風には強い地形かと思ったが、強烈な季節風は海へと回り込んで吹き込み、山の配置など関係ないようだった。

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ぼつぼつと落ちている

浜の中央部には貝がまったく落ちてない。
波打ち際に向かって右側に進むと、貝殻が打ち上げられているところが少しだけあって、そこには、南洋にいくほど種類が多いといわれる、タカラガイがよく見られた。
さすがは、黒潮洗う三重県の外海。この浜に落ちていたなかで、タカラガイがいちばん多いんじゃないかというくらいだったのでつい夢中になって拾った。

しかし波にもまれてしまったのか、つやがなかったり欠けたりというやつが大半。
もうちょっと薄い貝とか、微小なやつとか、そんなのが落ちてないか砂や小石の間を注意深くみたが、ある程度の大きさのやつがまばらに落ちているだけだった。

冷たい突風も吹き荒れ、鼻水が出てくるので、頭のフードを二重に。
手も冷たいし、晴れているといっても冬の荒れた天気だった。

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層状の岩や、小石が広がる浜

さらに南の浜に行く。
「密漁禁止」の看板が立つが、貝殻拾いなのでそこは大丈夫。
一様に黒っぽい小石が広がる浜には、どういうわけか、サザエ、アワビ、ヒオウギといった、大きな食用貝の殻だけが落ちている。
これは海女さんらが漁で採ったやつなのではないか。
食用以外の貝はほとんど落ちていない。

そんななか、打ち上げられた海藻とともに、すり減っているがイモガイ発見。
これも南洋に多く産する貝で、黒潮の浜だなあと南洋ムードを味わう。
アオリイカ釣りのまだ使えそうな餌木もゲットした。
根掛かりしたやつが、海藻ごと浜に打ち上げられたようだ。

とにかく寒かったので早々に退散。

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拾った貝

並べてみると、あんがいたくさん拾ったことに気づく。
タカラガイ(右上に並べた楕円形の貝)はみなおなじように見えるが、内側の歯や模様の違いからみると、ハナマルユキ、クロダカラ、チャイロキヌタ、メダカラなど数種類あるようだ。

また、右下のあたりは、南張浜に流れ込む南張川河口の干潟で拾ったもの。
ウミニナの仲間(右側上から5列目の細長い巻貝)も、よくみるといろいろな形、模様があって数種類あるものとみられる。

イモガイ(左端真ん中の逆三角形の貝)は、模様からベッコウイモガイではないかと思う。

もうちょっとまじめに拾っとけばよかったのかもしれないが、そこにあったやつを一様にひろった結果が上のような感じだったとしたら、そこの海における貝のありようを素直に反映している部分もあるのかもしれない。
もしかすると、浜の形状、傾き、波の強さ、砂粒の大きさ等で、打ち上げられやすい貝とそうでないやつがあって、たまたま浜に上がりやすいのがタカラガイだったのかもしれない。どうなのだろう。

太平洋側、晴れてるといっても、風のきつい日は、浜を歩くのも大変なので、これからは貝拾いにでかけるとき、風の強さにもう少し注意しておこうと思った。

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びん詰め

空き瓶となっていた菓子のガラスびんをふたつ、子どもからもらった。
大きさ別に、分けて入れてみたら見やすくなった。
貝のびん詰め、入れすぎないことがこつか。
しかし小さなびんに小分けすると、たちまち置き場所がなくなってしまうだろう。困ったものだ。

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2019年01月08日

貝殻を訪ねて2019

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海岸への階段(午前11時半ごろ)

年1回の、貝拾い行を三重県・志摩へ挙行。

大王崎の北にある浜まで約3時間。
1月、いつもいい天気だ。

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静かな浜

この数年、水辺のオフシーズンとなる冬場の楽しみとして貝拾いを行っているが、はかばかしい成果が出ない。
一昨年は鳥羽から島に渡ったが、ほとんど何も貝が落ちていなかった。
まあ海辺の風景を見てのんびりするのが目的だから結果にこだわらない。
そう言い聞かせてはきたものの、あまりに乏しかったら再考せざるをえない。

「市後浜」におりると浜の砂は上の写真のようにちょっと黄色みを帯びた白色だ。

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砂の上を見る

砂の上を見ると、このように小さな貝が点在している。
これらを拾って歩くが、同じ種類のやつはいくつもあり、ある程度拾うと、種類数が増えなくなる。

赤い色をした二枚貝でとげのはえたウミギクガイが多い。

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タカラガイ

タカラガイもたまに見られる。
黒潮洗う太平洋だから、こうした南洋を連想させる貝がたくさん落ちていてほしいが、思ったほどは見つからなかった。

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岩の上に生えた木

貝をたどって海岸線を南に歩くと、黒い岩が浜から突き出している。
木がけっこう太い幹となっていてたくましい。
岩はごつごつして硬いが、割れ目があって指を差し込むと、いとも簡単にぼろっと欠ける。岩の割れ目に根を伸ばしているのか。

それにしても砂は白いのに、岩は黒くて色調がまるで違う。

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黒い岩に吹きだまった白い砂

この岩からできた砂なら、もっと黒っぽい浜になるだろう。
砂をどこかよそから持ってきたのかとも思ったが、それにしてはそんな有名な海水浴場でもないし、そこまでするかなと思われた。

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崩れた岬の上のほうの岩が白っぽく、下部は黒っぽい。

浜の北側の岬の斜面が崩れていて、あらわになった岩をみると薄黄色っぽくて浜の砂と同じ色をしていた。
しかし下半分は黒っぽくて、それがほぼ平行に続いていた。

これは白と黒の別の岩石の層であるように見えた。

これは以前、松坂市月出で見た中央構造線の露頭を思わせた(2016年10月20日記事「中央構造線の露頭」参照)。
黒いもろもろとした岩の質感も、あの場所の黒い岩と同じような感じだった。
あのうす黄色い岩は風化しやすくて、このような細かい砂粒の浜になったのだろうか。

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国府白浜

さらに北側の国府白浜は、もっと砂が細かく滑らかで色も白っぽかった。
数キロの距離で浜の質感が変わって不思議だなと思った。

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海辺のバス停付近、なごみのガーデン

とまあのんびりして穏やかな冬の昼間を過ごした。

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本日の成果

いつもながら、たいした成果はあがっていないが、こうして紙の上に並べてみるとそれなりに見える。

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シラネタケガイ

この細長い巻貝はシラネタケガイというタケノコガイ科の貝であるようだった。
房総半島以南の、水深20〜60メートルにすむと図鑑にある。
これは初めて拾ったのでうれしい。

こういう細かな貝を集めるには、砂ごと持ち帰ってふるいわける方法もあるようだが、そんなことをしたら環境破壊につながりかねないので、やっぱり一つ一つ拾うのがいちばんだ。


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(おまけ)悪魔の顔? の巻貝





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2018年02月11日

貝類標本箱

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先月、三重県の伊勢湾に貝拾いに訪れ、拾った貝を見えるところに置いておこうと、標本箱づくりを行った。
従来は、小型のガラスびんに全部を入れていたのだが、貝には薄いやつや厚いやつ、大小いろいろあり、ぜんぶを一緒に入れておくと、薄いやつが割れたりして、分厚いやつしか残らなくなってしまう。

そこで小さなジップ袋に入れたりするのだが、保存にはいいが、観賞にはいまひとつなので、卓上に置ける標本箱を作ってみたくなったのだった。

無印良品に透明なアクリルのケースが数種類あり、その中から選んだ。ただその製品にはふたがなかったので、別にホームセンターで工作用プラ板を買い、寸法を合わせてカッターで切り、両面テープを一辺にだけ貼ってふた代わりとした。

両面テープを2辺以上に貼ると、こんどは中に入れたものが取り出せなくなったり、ケースの中の貝の位置をいいように調整できなくなってしまう。完全にふたが閉まらないので、ほこりの侵入が避けられないが、ここはまた工夫していきたい。

透明なケースだと、光が入るから、当然、色があせたりはすると思うけど、観賞用品として卓上の飾りにしたのだった。
posted by 進 敏朗 at 12:34| Comment(0) | 貝拾い記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月20日

貝殻を訪ねて2018(岸岡山)

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岸岡山の展望台(午前9時ごろ)

伊勢湾の千代崎海岸に、岸岡山(45メートル)という低山がある。
3年ちょっと前、この地を訪れたとき(2014年10月29日「赤貝の浜(白子〜千代崎)」、登ってみたいと思ったが時間の都合で果たせず、この日は貝拾いを兼ね、念願の岸岡山登頂を果たした。

といっても、高さが45メートルしかなく、しかも駐車場も中腹にあったため、車を降りて10分もかからず、これまでで最もお手軽な低山めぐりとなった。

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展望台からの海の眺め

だが周囲は真っ平らな土地で、山頂は海岸から数百メートルしか離れていないので、上の写真のように、海の眺めはよかった。

朝のため東側に面する海は逆光で、晴れていたがもやがかかっており、対岸の愛知県側は見えなかった。

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案内板の手描きフォント

案内板には、対岸に見えるという島などが描かれているが、水平線が丸く描かれ、水平ではなくて斜めになっている。

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千代崎海岸

さて、そこから真正面の千代崎海岸に出てみる。
やはり以前、見た時のように浜には大量の二枚貝が転がっているが、前回見たときよりは少なくなっている気がする。

主に落ちているのは、白くてたて筋の入ったサルボウガイだが、よく見ると、違う貝もある。
この日は、ナミマガシワという、光沢があって黄色や橙色をした貝を中心に拾った。
なぜそれを集めたのかというと、見た目にきれいだったので、それにひかれたのだった。

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漂着した柔らか生物

貝にまじってナメクジのような形状・質感・大きさの生物が落ちている。触るとかすかに動いて生きているようだ。釣り餌にするユムシに似ているが、たて筋がついている。これが砂浜の随所に落ちていた。

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伊勢型紙資料館の風景

そのあと白子地区の伊勢型紙資料館を訪れ、伝統の技を見る。ここも、前回訪れた時に気になっていた場所だった。
上の写真は、中庭を背景にしたビデオ上映がシュールな雰囲気を醸し出していたので思わず、ビデオを一時停止してもらって撮影。
この日は型紙彫りの実演もしており間近に技をライブで鑑賞できた。

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拾った貝(21日撮影)

このようにしてナミマガシワを中心に拾ってみたら、色にいろいろとバリエーションがあった。
上から4列目左端の茶色い楕円形をした貝はミゾガイというマテガイの仲間で、筆者にとっては新たにゲットした貝と判明した。

今まで、拾った貝はびんに詰めるだけだったけど、ちょっと展示方法も考えてみたいなと思った。

posted by 進 敏朗 at 14:30| Comment(0) | 貝拾い記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする