
琵琶湖大橋の説明看板
1964年に開通した琵琶湖大橋は湖東と湖西を結ぶ夢の架け橋。
南北約63`におよぶ琵琶湖の幅が最も狭まった場所に架かる。
琵琶湖の形を花束に見立てると、ちょうどリボンを結ぶ場所あたりに例えられるだろうか。この橋があるおかけで、滋賀県南部にすむ筆者のような人間は若狭湾や湖西方面に釣りに行くときなど、絶大な恩恵を被っている。

今堅田の出島灯台付近から眺める琵琶湖大橋と対岸
この琵琶湖の幅が最も狭い場所のことを、瀬戸とか水道とか何か言い表す地理的な呼称があるのかと探したのだけど、それが見当たらなかった。
ひょっとすると筆者が知らないだけかもしれない。けど琵琶湖大橋を何度も使いながら、その湖の狭まり部分を指すことばを聞いたことがない。どなたかご存知ならご教授いただきたい。
そこでこの湖の狭まりを「湖峡」と称してみたのが今回の表題です。

真野川河口(左岸側)と対岸
なぜこの場所で琵琶湖の幅が狭まっているのか。それは、湖西側からは真野川、湖東側からは野洲川が張り出していて、とくに野洲川デルタの出っ張りが大きい。最も幅が狭いのは琵琶湖大橋のちょっと北、真野川河口と「ピエリ守山」を結ぶ場所で、国土地理院の電子地図に定規を当てて計ったところ1030メートルくらいだった。これは誤差のある数字であることはお許しいただきたい。
湖の東西両岸に大きな川の河口があるのは偶然ではなく地質上の理由があるのかもしれない。
このあたりには100万年前、琵琶湖の前身堅田湖があったという。
比叡山とか比良山が隆起を始めたのは40万年前、琵琶湖が今のような広くて深い姿になったのは30万年前とされている。
琵琶湖の西岸は、比叡山や比良山系が湖岸からすぐにそびえているが、堅田のあたりは割と広めの平地になっている。真野川沿いに上流にさかのぼると、ここだけ険しい山がなく、途中峠を抜けて京都に行ったり、鯖街道を通って小浜方面に行くこともできる。
このような地形から堅田は陸上と湖上交通の要地として栄え、現代では琵琶湖大橋が架けられた。
この場所をいつか歩いてみたいなと思っていたがたまたま、朝だけ京都で所用があり、いつも東海道線で帰るところを、回り道して湖西線に乗り、堅田で降りたのだった。
さて、駅からまっすぐ琵琶湖に向かって歩くと内湖に出る。

船が上がってきそうな水路
陸地の内側に内湖が点在するのも目立つ。
真珠養殖の筏が並んでいて、水門で琵琶湖よりも数十センチ水位が高い。
冬の野鳥などを観察。

出島灯台
琵琶湖大橋方面に向かうため、内湖から北上、浮御堂には行かず。
船舶の往来が多い「湖峡」では、船の遭難事故も発生し、安全のため灯台も設けられた。
出島灯台は木造で心柱構造だった。
勾当内侍(こうとうのないし)の墓とされる石塚(野神神社境内)を見、南北朝騒乱悲恋の歴史ロマンにひたる。
武将新田義貞の連れ合いとなった公家の娘勾当内侍は、迫る足利軍勢から逃げるため京から落ち延び、堅田の地にとどめられるが、北陸へ向かった義貞戦死の報を受け、近くの浜で入水自殺したと神社内の看板は伝える。
「太平記」では尼になり余生を送ったとされている(ウィキペディアより)。
真相はどうなのか、それは分からないが、神社の説明からは、堅田が中世から、京から北陸方面へ向かう際の要衝だったことが読み取れる。

船の部材? を利用した家の壁

湖岸近くの石組
家屋はいろんな工夫が凝らしてあり、石組も興味深い。玄関を照らす電灯の傘に松のレリーフがつけてあったりと、細かいところまで趣がある。
堅田から今堅田に北上、いったん真野川河口をのぞき、対岸を見たあと戻り、琵琶湖大橋に入った。
全長1400メートル、いちばん高いところは堅田寄りにあり、水面から26.3メートルの高さ(冒頭の写真を拡大すると看板内の図解が見れます)。
勾配は5%でそんなにきつくはなく、サイクリング者だけでなく、若者のママチャリ立ちこぎも。
歩道は北側にあって、幅は2.5メートルくらい(目視)。筆者は高いところは苦手だけど、欄干から1メートルくらい離れたら恐怖を感じなかった。また、これくらい幅があれば、自転車が猛スピードで接近してもよけることができる。

湖西側の風景
橋上で立ち止まり琵琶湖の景色を観察。

真野川の河口が岬をつくっている

♪ここから
東行き車道の追い越し車線では、「琵琶湖周航の歌」が流れる。これは道路に溝がしてあって、溝幅の長短が音階となり、通過車両のタイヤが当たることで音が生じメロディーになるのだった。
車のスピードによって、トーンの高低はさまざま。速度がゆっくりだと低く、スピードが出た車からはハイトーンの歌声が聞こえ、まるで各々の車両がそれぞれの「周航の歌」を歌っているようで興味深い。

野太い歌声が響く
さらにはトラックやダンプカーの大型車両が通ると、ひときわ野太い歌声になった。荒くれ男が歌っているようだった。

びわかぜ帰還
と、琵琶湖をみると、漁船より大きい船がぐんぐんと近づいてくる。
白・青のツートンカラー、あれは新鋭の調査船「びわかぜ」(2015年5月30日記事「水質実験調査船びわかぜ」参照)。
今年は1月26日に、琵琶湖の全層循環が確認されたと先日報じられた。
全層循環、それは厳冬期に、琵琶湖表層の水が冷やされることで深層に沈み、90メートル以深の湖底に酸素が行き届く「琵琶湖の深呼吸」。これで今年の琵琶湖もひとまず安泰だ。その朗報は「びわかぜ」によってもたらされただろう。
湖上を滑るように進むびわかぜは軽快な印象。
背後の車道で「琵琶湖周航の歌」のメロディー。まるで、大津へ帰還する同船へのエールのように聞こえるじゃあないか。
以上の見立てで動画を撮ると面白いかも、と撮影してみた。
…風音ばかり拾って、メロディーがあまり聞こえなかった。やはり、撮影にマイクは大事と再認識。
当初、琵琶湖大橋をはさみ東西両岸でバードウオッチするという企画を考えていたが、天候悪化もあり、橋を渡ったところでバス停からバスに乗り、帰った。
案外、琵琶湖大橋は車で通った印象よりは、歩きではそんなに急坂とは感じられず渡りやすかった。自転車だと、また印象が違うかもしれない。
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この日見た鳥たち、ヘボい写真集

コガモ(堅田の内湖)

ヒドリガモとオオバン(同)

モズ(内湖付近)

屋根上のスズメ群

ジョウビタキ(真野川河口付近)

ホシハジロ(琵琶湖大橋から)

キンクロハジロ、1羽が潜水
その他ツグミ、何かのシギ、カワウ、トンビ、カラス、ヒヨドリ、ムクドリ等目撃。