2022年10月29日

低山行(その3) 庚申山

滋賀県南部の低山へ

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庚申山(406メートル)がそびえる山上集落(午前9時ごろ)

平地と低山がせめぎあう滋賀県の地形。
地図を見ていると滋賀県にはいろんな形、高さの低山が、平野の周りに広がっている。
県南部、甲賀市の水口から信楽方面へと国道307号線を車で走ると長い上り坂があって、東と西で土地の高さが違うことが感じられる。
坂の途中、小高い土地があり、平地と高い土地の間に、ゆるやかな傾斜をした中間的な高さの地形が展開する。
地図を見ていて、適度なアップダウンが歩くのによさげな地形に感じられた。
そこらあたりで、高低差200メートルくらいの行路が描けるんじゃないかと思ったら、ちょうどよい山があった。庚申山(406メートル)は、山頂まで実線で道路がついている。

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里山と田園

庚申山のふもと、甲賀市水口町山上の、立派な公民館や公園が見える池のほとりに駐車。山容をのぞむ。
本来ならJR草津線貴生川駅から同地へ歩いたほうが、なだらかに隆起している地形をより味わえると思うが、今回は時間の関係で同地に直行。駅から南西方向に約3キロ、標高は駅より約40メートルアップ。
ここから、山の北側の谷道をいったん西へ回り、西端から始まる登山道を歩き、頂上に達した後、そのまま東向きに同集落まで下りてくる周回コース。
駐車地点は海抜200メートルくらい。山頂へは、もうあと200メートルくらいだから、そんなにしんどくはなさそう。

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集落を流れる宮川

里山の集落

山から流れてくる宮川も、完全に護岸で囲まれているのではなく、砂利や石の川底が見えてさらさらと流れている。
流れはわりと急で、砂は白っぽい。

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集落のゆるやかな登り坂

サアまずは、集落内を歩きながら、山のふもとのゆるやかな坂の景色を楽しむ。

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柿がたわわに実っている。
しかし民家敷地のものは取らない。

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神社

集落の北端まで行くと神社があった。
石段を登ってみる。

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低山と田園

低い山と杉林、田が広がる高台の風景。
神社を下りて、川に沿って西へと歩いていく。

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信楽高原鉄道の鉄橋

舗装道の行路

まずは信楽高原鉄道の鉄橋をくぐる。塗装の工事中であった。
上の写真で、左が信楽方面。同鉄道は貴生川から上り坂が続く。
同鉄道の起点、貴生川駅から、次の紫香楽宮跡までは9.6キロもあり、その間は山の中を進む。貴生川駅の海抜は約160メートルに対し、紫香楽宮跡駅は海抜約280メートル。途中で通る峠は約330メートル。なかなかの坂を通らねばならないのだった。

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庚申山への入り口

小野峠へとつながる林道の入り口はこのように柵が置かれていたが、どかせようと思えばどかせられるようになっている。
山の斜面沿いを、割とゆるやかな坂の道が続くが、筆者にとってはそれも楽とはいえない。

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林道の中

杉の木立が両側にそびえて中は暗い。
前方から自転車が1台下りてくる。
筆者はこのゆるやかな坂を、ハアハア言いながら歩いている。

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クリの倒木

道路の真上に、立派なクリの木が倒れる。
しかし実は、小さなイガが数個あっただけだった。

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小野峠か

歩くこと約30分、切通しが現れた。
国土地理院の電子地図に「小野峠」と書いてあるんで、ここを「小野峠」と思うことにする。
標高338メートル。もう130メートル以上も上がって来た。

登山道は高低差70メートル

ということは、頂上まであと70メートルしかない。これは楽勝か。
しかし、歩くことで体重を減らすという目的もあるので、あまり楽だと効果が薄いのではと懸念もするが、疲れすぎるよりはいいだろう。

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登山道の入り口

切通しを過ぎてほどなく登山道の入り口が出現。
看板を左折。そこから先も舗装道路だ。

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やや急な坂

登山道に入って初めのあたりがやや傾斜がきつくなり、それなりにしんどい思い。
一様な傾斜が続く舗装道路特有のしんどさというのだろうか。休む隙を与えられないというか。
効率的な運動にはいいのかもしれない。

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花崗岩

山肌が露出した部分を見ると、岩体は花崗岩であった。
季節が深まったせいか、または岩質のせいか、米原の石灰岩の山地では割と頻繁に見られたキノコ類がこの山ではほとんど見られない。

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紅葉が始まる

しんどい坂道を過ぎると、傾斜もほとんどなくなって、「紅葉の径」と看板あって楽々の散歩道の趣に。
モミジが植わり、紅葉も始まっていた。

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真の山頂?

さて地図を見ると、三角点は406メートルだがそのピークの西には410メートルの等高線が引かれた山頂部があって、そこがいちばん高い地点のようだった。行くと、割と新しい石塔がある。

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サルノコシカケ

大きな松の木の根元付近に、サルノコシカケが生えていた。

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ペットボトルを並べる

大きさを比較するためにペットボトルを置いたら、ピンボケになってしまった。
とにかくこのような本格サルノコシカケが見られて感動。
もとの道路にもどると、すぐに山頂の駐車場だった。

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休憩小屋

山頂には平たい土地があって、広いベンチの休憩小屋もあり。

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かまどや臼

煉瓦とタイル張りのかまどに臼も。
煙突らしき設備はないが、セミオープンの舎屋なので、横から煙が逃げていくのであろう。
趣はあるが、煙たくはならないだろうか。

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山の由緒を説明する看板。忍者の顔出し付き。

庚申山は甲賀三山の一つといわれ、山頂の広徳寺は天台宗のお寺。ふもとの里、山上の人が戦国時代に、真鍮(同と亜鉛の合金)を生み出したとある。同山は非鉄金属業界の信仰が篤いという。

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広徳寺

広徳寺に参拝。
金物商が寄付を行っている。

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裏手の岩

本堂の裏手には奇岩が迫る。
その形に合わせ堂の屋根が切り抜かれたように後退している。
山頂の巨岩。やはり修験の場としていい感じだったのだろう。

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鐘つき堂など

素晴らしい眺望

そして鐘つき堂などがあり、そこを歩いて抜けると展望台があり、東の方角が一望できた。

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展望台からの眺め

林地と田、住宅地が混じる甲賀の平野を一望。
30年以上前に初めて国道1号線から見た水口周辺の風景は、丘が低くて住みやすそう、というものだった。
なだらかな丘が平地と連続して広がる風景、というものが珍しかったのだった。

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伊吹山や霊仙山

伊吹山(写真中央奥)や、霊仙山(同右奥)も見えるぞ。

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山並みの切れ目から見える藤原岳

森の鉄路

そこから右に視線を移動すると、山並みの切れ目から鈴鹿山系の藤原岳も。
庚申山自体は低山であるが、平野の端にそびえているだけに見晴らしは良かった。

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草生える橋

サアあとは、そこから下山路は一気。一部崩れかかっていたが、電柱もあって迷うことはない。
下山路も終盤にさしかかり、草の生えた朽ちかけた橋が現れた。何だろうか。

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鉄道をまたぐ橋だった

それは先ほどの、信楽高原鉄道をまたぐ橋だった。
鉄道建設で山が切られ、もともとあった登山路には橋が渡されたものとみられる。
列車が来ないかなと待っていたら、数分のうちにガタゴトと音が聞こえ、カーブの向こうから1両編成の列車が現れた。
人気のない山中に現れる列車は、ほかにはない存在感。
手すりにカメラを固定して動画を撮ったんだが、処理しそこない消えてしまった。残念。

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川と庚申山

このようにして滋賀県南部の低山、庚申山から無事帰還。
里の風景や、山頂からの眺め、そして真鍮の歴史を秘めた楽しい行路だった。





posted by 進 敏朗 at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 低山めぐり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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