講談社ブルーバックスの「地球の中身」(廣瀬敬著)という本を読んだ。
たまたま本屋で手にし、奥付をみると今年の1月20日第一刷発行ということで新しい本だった。
私自身は水辺や地形などに興味があり、このような水辺にまつわるブログを興してみたのだったが、この本は地球の内部について最新の研究成果が紹介されており衝撃を受けた。
地球の内部、地殻の下にはマントルがあって、その下には外核、内核がある。そこまでは高校で習ったので知っていた。
口絵には筆者の開発したダイヤモンドを使った高圧加圧装置の写真があり、2000年代に入って完成した。その装置を使うと地球中心部の364万気圧という状態も再現が可能になったといい、これによって、地球をつくる物質が内部でどのような状態にあるのかがより詳しくわかるようになった。マントルの深さによって、マントルの主要鉱物であるカンラン岩が加圧されて何段階かに結晶構造が変わり(相転移)、それによって固さとかの性質が変わってきて、マントルの対流や地震波の伝わり方に影響を与えているとか。口絵に鉱物が掲載されているが、透明なうぐいす色や深緑色で宝石のようだ。実際にペリドットという宝石として扱われていると知った。こんな石が地球の中に詰まっているのだ。
さらには地球内部の鉱物の振る舞いによって発生する磁場の話もあった。
マントルよりも深部には核がある。核は主に鉄でできており、液体になった鉄が地球の内部で対流したりして磁場が発生するのだという。
この磁場があることで、太陽から吹き付ける強力な電磁波が地表に達するのを遮り、生物への放射線による影響や、水から水素が分解されて宇宙空間に散っていくのを防いでいるのだという。
地磁気といえば、訪れたのが千葉県のチバニアンだった(2019年12月19日「チバニアン」記事参照)。
訪れたのはコロナ禍の直前で、行ける時に行くべしとあの時思ったことは正解だったと今、あらためて思うが、チバニアンの養老渓谷の地層に記録された地磁気の逆転は77万年前のことだった。地磁気が反転する前後の時期、地磁気が弱まるとされ、その際の太陽風による生物への影響(遺伝子の損傷とか)はどんなものか。チバニアンの時には現生人類はいなかったので、今後地磁気の弱まりは人類への影響がどうなのか。地磁気は年々弱まりつつあると観測されているが、地磁気弱まったり反転する仕組みはまだよくわかっていないという。気になるところだ。
ただ磁場は長期間なくなることはなく、逆に6億年前ごろからは強まったという。そのころ、地球の最深部には固体の鉄からなる内核ができたとされ、それとこれとが相関しているのではないかと。そしてそれ以降の時代、カンブリア紀の生物の爆発的進化が起きるが、これも関係があるのではないかと。
地球の中での深さによる加圧に伴う物質の振る舞いの変化と、それによって生ずる大気や海、地中への物質(二酸化炭素とか水とか)の循環、さらに熱の伝わりや保持、磁力の発生がからまりあって、安定して生物が生存できる環境をつくりだしていることが説明されている。ほんとによくできたものですね。
太陽系の中では火星にも40億年くらい前には海や地球と同等の気圧の大気があったという。だが火星では地磁気がなくなったことで水や大気は38億年前には吹き飛ばされてしまった。なぜ火星で地磁気が消えたのかについて本書では、地球内部でのマントルや核の振る舞いと、それを火星に当てはめた場合に質量の違いなどから同じようにはならないことを説明している。最新の火星探索の知見もとりいれながら、同じ元素でできた他の惑星や月と比較して、地球の環境は生命が活動するのに条件がうまくそろったんだなあと思わざるをえない。
地球はひとつのシステムとして成り立っていることを知ると、そこらへんの石や土、水辺といったものを見ても、何もかもがあるべくしてある、という思いが深まる気がする。