「かわ」加古里子(かこさとし)さく・え を図書館で借りた。
かこさとしといえば、だるまちゃんシリーズなどで知られる、絵本作家で、昨年亡くなった。
「かわ」は1962年刊で、2018年までに87刷をかぞえるロングセラー。
タイトルのとおり、川の源流から河口までをたどるという絵本だった。
なお、2016年には、全部のページが一枚でつながった絵巻仕立ての「かわ」も刊行されており、それも図書館にあったので借りた。
かこさとしの自然科学関連の絵本、ほかに「海」「地球」「宇宙」「人間」も。たった一人の作者で、なんというタイトルの壮大さだろう。
下流部の都市
「かわ」を開く。
川が、源流から始まって、渓谷、扇状地、沼沢地、沖積平野などと地形が展開し、やがて河口から海に注ぐ様子が、一本の流れとともに描かれている。いっぽう、ダムからの取水や水力発電所からの送電、さらには林業、農業、商業、工業など人の暮らしといろいろかかわる様子を示す。
最初のページの山頂部の岩に、ライチョウがいたかと思うと、つぎのページでは中禅寺湖のような火口湖や滝、噴煙を上げる火山があったりと、いろんな所からの地形や生物の要素がとりいれられている。
川の下流、河口近くには都市があって、鉄道の駅を中心に市街地が広がっている。
滋賀県は、大きな川があまりないので、川の大きさと町の大きさはリンクしていない。河口も、海ではなく琵琶湖なので、工業地帯や港湾は発達していない。
鳥取県では、東部、中部、西部の「3大河川」がつくる平野にそれぞれ鳥取、倉吉、米子の各市があるけど、鳥取、米子では川の本流と市街地はやや離れ、倉吉では、川のやや上流に町があって河口部は農村となっている。
この地図に合うような、川の本流と町の中心部が密接にからんでいる都市といえば、どこがあるだろうか。広島、川崎、近畿では大阪か。。。
などと、絵を見ながら思いをめぐらしていると、駅からの放射状の街路の様子が、表紙の地図に似ているなあと思って見ると、子供らが眺めている地図がそのまま、作中に展開されていることに気がついた。
文教地区
都市中心部から橋を渡ると、プールや野球場、美術館、児童公園といった文教地区がある。
地図の該当部分
これも表紙の地図では、位置関係もそのまま同じように表されているのだった。
全ページにわたって、表紙の地図に表されている地形が、絵に描かれている。
絵本を描くのに、まず川の源流部から河口までの地図を創作したうえで、その光景を描いたようだ。
この絵本、4歳から小学校初級向きとあるが、、、、。
思わず「これは、、、」とうなった。恐るべき徹底ぶりだ。
三日月湖で投網をする人
昔、小学生のころ、地図ファン、時刻表ファンとなり、地図を創作する趣味があった。その作図の源泉は地図帳の地形図と時刻表からきていた。
この絵本にそのころ出会っていれば、地図というものに違った見方を与えられたはずだ。
そう思わずにはいられなかい。
長らく手元においておきたくなった。