新潟県で開かれている「大地の芸術祭2018」。
3年に1度開かれる同芸術祭に9年ぶり3度目に訪れた。その当時は作品をひとつでも多く見て回ることに血道を上げていたが、「巡る」ということが自己目的化した感があった。このたびはそんな作品メーンでなく、ゆるやかに水辺なども見ようとした。
冒頭の写真の野外作品の奥には、信濃川が流れていて、右側のカーテンの下に、黒い点のように鮎釣りの人が見える。
十日町橋に立つ信濃川の看板
芸術祭が開かれている十日町市、津南町には信濃川が流れているが、これまでこの信濃川に近づいたことはなかった。
日本でいちばん長い信濃川。このあたりは、その中流になるが、河口までは130キロ以上、いちばん遠い源流には200キロ以上あるという果てしない長さ。
ちなみに滋賀県でいちばん長いのが野洲川の65キロ。
本流に近づく
十日町橋下流の「つまりっ子ひろば」から本流に近づいた。
水量が、滋賀県でみる川とぜんぜん違う。
これは、入ったらひとたまりもなさそうだ。
清津峡からの清流の眺め
渓流が柱状節理の岩山を貫く清津峡の青い水を見た。
ごうごうと流れているがこれも数多ある支流の一つでしかない。
川の規模に圧倒される体験。
こう書いていると、作品を見ずに川ばっかり見ていたように思えるが、作品もそれなりに楽しんでいた。
秋山郷で見た蜂箱と石の作品
秘境といわれる秋山郷では、蜂箱と石を組み合わせた作品があった。
その土地にあるものを組み合わせることで作品ができるのだ。
雨に打たれ、野外彫刻が並んでいるような、墓標の列のような風にも見える。
よく見ると石が、1個ずつ色や質感が違うやつが選ばれている。
蜂もいて、この彫刻を守っているかのよう。
豪雨に見舞われ、そのほかの作品は断念して山峡から脱出した。
天気が違っていたらまったく違った印象だったかもしれないが、雨の中、見知らぬ土地の高い崖沿いの運転は、大げさかもしれないが恐怖を感じさせた。
河原の石
これは秋山郷とは別の川の河原だが、石の感じは滋賀県とは違っていた。
見たことない感じのグリーンの石がある。
沢水と高低差を利用した2段池
作品が展示されていた中里地区の小学校跡地の近くで、沢水と、高低差を利用した2段式の池があった。
まず上の池に水をためてから、石垣の中に通したトンネルから、下の池に水をそそいでいる。上の池にはコイが泳いでいる。
上の池には、大雪時が降り積もっても大丈夫なように、というコイへの配慮なのか、土管が置いてある。
土地の高低差と、豊富な沢の水、河原から拾ってこれる石。
場所の条件をいかしたみごとな手作り装置だ。
自分もこういうものを作りたいと見とれた。
場所を生かすことが肝要なのだ。
田
中山間地なのに休耕田となることなく一番上の田まで青々と稲が育ち穂を出そうとしている。
魚沼産コシヒカリの産地で農家食堂のおばさんによると、値段が10キロで6000円と、通常の倍くらいで売れるとのこと。
だから休耕田がほとんど見られないのかも。田んぼの中には、雑草ひとつ見られない。
農家食堂では、野菜の料理が出てきたが、野菜はどこで作っているんですかと聞くと、「高地」で栽培しているという。
それは段丘上にある台地で、確かに行くと、畑や畜産の施設が広がっていた。
龍ケ窪
日本名水百選の龍ケ窪(津南町)もそうした段丘上にあった。
窪、というとおり、土地が陥没してできた断層湖。
池には数々の龍神伝説が残される。
雨上がり、霧がかかって神秘の趣。
伝説にちなんだ映像の作品も。
作品のTシャツもそそられた。
名水をペットボトルに汲む
翌朝、コーヒーをつくったら、うまかった。
コシヒカリ、塩にぎりにも、食感、味と納得。
いつも食べているコメも、もっとおいしく食べられるのではないか。
そんなことも思った。
思い出深い夏となった。