2016年02月16日

鵜沼のチャート

名鉄線鵜沼大橋.jpg
木曽川の犬山橋を渡る名鉄電車

岐阜県の木曽川河原に広がるチャートを、いつか見に行きたいと思っていた。この2月の水辺活動オフシーズンに、岐阜県方面に周遊した。

高山本線の鵜沼駅で下車。そこは名鉄線のターミナルとJRがドッキングする鉄道スポットで初めて訪れた。

むかし時刻表をみると特急「北アルプス」号が、名鉄の駅を出発して鵜沼から国鉄に合流するという走りが不思議だった。鉄道図鑑を買ってもらうと、国鉄の気動車特急に似せたデザインだが赤い線の形が少し違うことに、つよい印象を受けた。

それで今回、訪れたらぜひ電車が橋を渡っている写真を撮りたいと思っていたが、行ってみると、自動車との併用橋だった犬山橋は、自動車と歩行者の新しい橋が2000年にできて今は鉄道専用の橋となっていた。

さあここから川を右岸沿いに徒歩でさかのぼっていくと、チャートの露頭が河原に見られるという。

木曽川2.jpg
木曽川

木曽川は、瀬田川よりもだいぶ規模が大きいみたいで、流れている部分の川幅で200メートルくらいはありそうだった。

川の透明度はほとんどない。大河というものはこうなのか。もしかして、上流には多治見とか有名な製陶業のまちがあるし、地層が粘土っぽいのかも、と勝手な想像を浮かべる。

川中から長くて四角い形をした岩が頭を出している。縞模様があってあれもチャートのようだ。チャートの岩脈は、向こう岸の山からつながっているみたい。

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チャートの露頭

おしゃれな住宅地が川面から20メートルぐらい高い段丘の上に造成中で、遊歩道が工事中になっていたりして、どこから下りるかまごついたが、河原に下りるとまず、高さ1メートルほど頭を出したチャートがあった。

チャートの褶曲.jpg
褶曲

裏に回るとこんな感じで褶曲が見られる。
チャート自体は、ち密で固い石なんだけど、これが飴のようにぐにゃりと曲げられてしまうから地底の圧力はすごいものだと思う。

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もっとチャートを見ようと河原を歩いた。河原には、あずき色をした岩脈が広がる原があった。

その赤茶けた色の、しわを刻んだ平面を見ていると、国立民族学博物館で見たアフリカ彫刻家の作品「レッド・ブロック」が脳裏によみがえった。

レッド・ブロック、それは赤い色をした同種類の空き缶をつぶしてつくられた、巨大なタペストリーのような作品で、空き缶の一つ一つはごみのような小汚い感じだったが集合すると何ともすごい量感で迫ってきた。とにかく存在感が圧倒的だった。

チャート表面の質感.jpg
表面の質感

古生代の深い海底に積もったプランクトン、有孔虫の殻を素材にしてでできたというチャート。
あずき色をした石は、滋賀県の愛知川や、犬上川でもときおり見られる。この岩脈の色や質感はそれらの川で見られるものと同じだった。

赤チャート石垣.jpg
近所で見られた赤チャートの石垣

これらは、2億年以上も前に南太平洋の海底に降り積もったものだそうで、海洋のプレートの動きで北上し、大陸にぶつかり、陸上に隆起して日本列島の素材となった。

褶曲2.jpg
褶曲

もちろん、降り積もった時は一様に平らな層だったのだろうけど、それから陸地に隆起していく過程でもまれたりして、このように激しい褶曲が生まれたのだろう。

色が異なる縞.jpg
色が異なる縞も

チャートの縞模様には、赤のほか白や、黒い部分もあるんだけど、この黒い部分は、古生代末に生物が大量絶滅した際の痕跡といわれていた。赤い色は、酸化した鉄が混じっているものとされる。それに対し、黒い部分には酸素がないかほとんどない状態だったといわれる。しかし、最近の調査では、この鵜沼のチャート層は中生代以降のものであるという。なぜそんなことが分かるのかというと、このチャートを溶かすと、中にある、まるで宇宙ステーションのような形をした有孔虫の殻が取り出せて、その種類から時代が分かるんだという。

それでも、この鵜沼のチャート層は厚さ100メートルにもおよび、5000万年もの間、継続して堆積が続いていたんだという。大変な時間の継続が見られるのだった。

白線.jpg
白いライン

しばし河原のチャートが原に遊ぶ。

チャートと苔.jpg
チャートと苔

専門知識もないため、眺めがすごいなあと、苔が割れ目にたまったりした様子が古代都市のミニチュアみたいに見えたりして、いろいろな見方をして楽しんだのだった。

岩と石.jpg
岩と石

付近に落ちている石は、上流から運ばれてきたらしい白っぽい色をした丸く削られた石と、付近のチャートがはがれてできた赤や黄色などの石がみられた。黄色っぽいものは「珪質粘土岩」というらしいが、ガラス質なのになぜ、粘土岩なのか。それはチャートと何が違うのか。分からないことは多かった。

だいたい一人で眺めているから、分からないことだらけなのである。

鵜沼の岩山.jpg
犬山橋付近の山を遠望

1億年以上前の日本には、南太平洋から、太平洋底の地層がぶつかっては地上に隆起していたのだった。

チャートの岩は深海起源。この現場から西の大垣や滋賀県に行けば、金生山とか伊吹山の石灰岩地帯があるが、それらはおなじ熱帯の太平洋起源だが、サンゴ礁の浅い海だった部分。石灰岩となるサンゴ礁の成分は、貝殻などと同様の炭酸カルシウムだが、チャートの成分は、ガラスと同じケイ酸ということで、成分が違うのだった。深海の圧力と環境では、炭酸カルシウムは水中に溶けてしまうので残らず、チャートのガラス質だけが残るので、成分的に純度の高いチャートの岩ができるんだという。

こうやって2億年前とか、そんな気の遠くなるような昔の海の底が、川の流れに削られて露出していて、すごいなあと思って帰った。













posted by 進 敏朗 at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以東) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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