
2匹の魚
夜、帰宅すると玄関内にバケツがあって2匹の魚がいる。聞くと、子供が近くの水路で釣って来たという。
昼、家を出る前に、子供が友達とザリガニ釣りがしたいが道具を貸してほしいといわれ、竿と糸、オモリ、針を付けて、庭の一角を掘ってミミズを5匹ほど与えた。ミミズをちぎれるかとたずねると「がんばる」と返事があった。これまではミミズを触ることもいやがっていたが成長が感じられた。
寝る前の子供に聞くと、ザリガニ釣りをしていたら、障害物の陰から出てきて掛かったといい、得意げだった。仕掛けを作るところまでは手伝ってやったが、自分で川まで行って釣った初めての魚だ。よしよし。こうした体験から、釣りや魚捕りが好きになるかもしれない。
バケツにいた魚は鼻先を水面に出して、苦しそうにしていたので、メダカ水槽用に買ったエアーポンプをつけ、さらにバケツから跳ねるのを防止するために農業用ネットを張った。
筆者が子供のとき、同様に玄関にナマズの入った浅い水槽を置いておいたら、夜のうちに跳ねたらしく、朝、水槽の外で固くなっていた。ドジョウでもそんなことがあった。よく魚を飼っては死なせてしまったものだ。ネットを張ったのはそんな経験にもとづいている。まあ死んだら死んだで、それも子供にとっては経験なんだけど、この道の先達として扱い方を教える。案の定、夜中、魚の跳ねる音が盛んに聞かれた。この魚は酸欠に弱いので、エアーポンプがなかったら、朝までに死んでいたかもしれない。

水槽に入れて撮影
子供が釣りをしていたのは幅1メートルもない集落内の水路で小さい子供のザリガニ釣りの場として親しまれている。地下水を揚水して流している水路では、ハリヨ復活が目指されていたが、もう見なくなって何年にもなり、無駄に大きな「ムツ」が育っている。コイに与えられている餌を食べて、体もはちきれんばかりに丸々としている。
地元でムツと呼ばれるこの魚は、知らなかったがカワムツとヌマムツの2種類に分類されているらしく、川の中上流にすむのがカワムツで、下流の流れの緩いところに多いのがヌマムツという。胸鰭が赤いとか、いろいろの細かな違いがあるんだという。
子供のとき、川ざらえの時とか、この魚もよく捕れたが、酸欠に弱くて、泥水の中ですぐに死んでしまう。水槽で飼うのはフナのほうが丈夫で、カワムツやオイカワを含めた「ハエ」はすぐ死ぬといって人気がなかった。食べてもそんなにうまい魚ではないらしく、今では狙うこともない。しかし、子供にとっては親しみやすい魚なのだった。