美術館前広場に置かれたトレーラーの荷台が改造された舞台では、公開の形でリハーサルが繰り広げられており、それを見ているうちに、館の中に入る時間がなくなった。女性と男性のダンサーが床やポールで艶めかしい動きを繰り広げ、トレーラーの下の広場ではタップダンス、ギター、太鼓の音が渾然一体となり、陶酔をさそう。ポールの上で、男女のダンサーが、花が開くような形になったところで音曲も最高潮に達した。これが「流浪する〈路地〉」なのか。夕闇の時間帯に繰り広げられる舞台はさぞドラマチックだろう。本番になるまでずっと見ていたかった。

市美前でのリハーサルの風景
先生に引率されたまだ幼い印象の男子学生が「ストリップや」と、興味深げに見つめていた。女子は「タップダンス、かっこええわー」。先生は、時間が来たので館内に入るよう学生を促すが、離れたくなさそうだった。通りがかりに見入っている人も多い。
「これ何」
「前衛おどりやろ」
おばさんの口から「前衛」という言葉が出てくる京のまち。
「ガーッと登らはって上手やな」
「なんで裸なん?」
子供がたずねる声も。
期せずして始まったリハーサルを見物していた人たちは、舞台の濃密さとはまた違った磁場をかたちづくっていた。見に来る人に、子連れが多いのは京都の芸術祭の特色なのかもしれない。

京都市美の隣を流れる琵琶湖疎水