
社家の水路
京都は上賀茂で開かれた花見宴に、昨日捕獲し調理したホンモロコ南蛮漬けを差し入れた。
夕方からの仕事前で短時間の滞在。
そこは上賀茂神社の境内から流れてくる川だった。明神川というそうだ。

しだれ桜
しだれ桜は開花期が遅めで満開だった。
この日、現場から上流の上賀茂神社では曲水の宴開催だったという。
川沿いに歌人が立ち、酒が入った盃が流れてくるまでに和歌を詠む催し。
そんな宴の余波が水流とともに伝わってくるかのような祝祭感。
この日花見宴に訪れた現場は同神社のゆかりの近世歌人加茂季鷹(かものすえたか)邸跡で、狂歌を得意としたという。江戸時代には今日の文人歌人のサロンだったという。今は邸宅はなく更地となっていたが、柿本人麻呂をまつった歌仙堂が建っていた。川は、邸宅敷地の中央を東西に貫く形で流れている。
現代では都市の自由人の国際感あふれるサロンとなっており、庵主よりシナモンの効いたカレーや、蒸し野菜料理、自然な風味のペーストのタコスを頂いた。感謝。缶ビールまでいただいた。

金魚がいる
中をのぞくと、金網ごしに、丸々とした20センチくらいの金魚が群れを成していた。金色のコイもいるぞ。池は、けっこう広くて、幅3メートルくらい、長さは10メートル以上はありそうだった。池には中の島がある。南方向に枝分かれした湾もついている、手の込んだ地形に。川から取水しているので、水を換える手間がいらない。水量豊富で枯れる心配もない。濁らない。神社から流れてくる水は汚染の心配もない。これだけの水なら、渓流のマスとかも飼うのは不可能ではないのでは。なんというすばらしい池環境だろうとうらやましくなった。

川(左)からの取水の仕組み
いったい誰がエサやりをしているのかと花見宴主催者の庵主氏に訪ねると、池を管理している地主の方は、郊外に住まれており、池の金魚の餌はタイマー式自動エサやり機で与えられているのだという。以前は金網はなかったが、サギに食われるので、金網を設置したのだという。
川と石橋
東西に流れる川は、けっこう急流で、両岸が石垣で固められている。地面から水面までは、1メートルもないくらい低い。しかし、この急流のゆえに、水はけはよさそうで、かなりの大雨にも耐えられそうだ。これは、扇状地先端部の上賀茂であるがゆえに、意外と土地に勾配があるからこうした低い水面が可能なんだろう。
池は、その川の南側に、東西に長い形をしている。筆者をこの花見宴に招いた左京著述人氏は、この池は川跡ではないかという。がしかし、完全に東西方向に伸びた川筋は、人工の水路としか考えられない。まあ人工水路を引いたところ、それが氾濫して蛇行するようになったとも考えられる。だいたい家の敷地内を川が流れているなんて、あまり見たことがない光景だ。

カーブした細長い池。もとの川跡だったという見方も
川底の石を拾ってみた。丸みは少なくて、もともとそこにあった石みたいにも見える。
川の石を拾ってみた
1時間もしないうちに辞去。季節感のあふれる庭だ。庭の池というものを考えるうえで多大な参考となった。