2015年02月03日

徐福伝説とペットボトル


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鈴島の岩穴

年1回の貝拾いを紀伊半島に挙行し、新宮市は三輪崎の海岸を訪れた。
新宮漁港の一角に、堤防でつながった小島が2つある。手前が鈴島、沖のほうが孔島で、そこは暖地性植物の林に覆われていた。小さな祠があって、豊漁祈願の蛭子さんがまつられていた。

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植物群落を説明する看板

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温暖な海岸に自生するハマユウ。夏に白い花が咲くという

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暖地性の植物に囲まれた祠

新宮漁港の堤防に囲まれた鈴島を見る。そこの岩は、表面は黒っぽいが、割れて落ちた断面をみると黄土色で、海岸で拾ったジャガイモ石と同じ材質だった。岩は削れやすくて、虫食い状の穴などミニ鬼ケ城のようだった。

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ミニ橋杭岩

この岩は調べてみると溶結凝灰岩といって、約1500万年前の火砕流が固まった岩なのだという。いまは火山がない紀伊半島だが、そのころには付近にふたつの巨大火山があって大噴火を起こしたとされている。その火山は、同じころに活動が始まったフィリピン海プレートによって引き起こされた。日本海が広がり始めて日本列島が大陸からわかれたた時期とも重なるといい、こんな岩にも想像を絶する時間と空間の流れが秘められているのだった。

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ハングルのペットボトル

山陰の海岸ではおなじみのハングルのペットボトルが驚いたことに、ここ黒潮洗う熊野の海岸にも落ちている。2つも見かけた。どんなルートでここまで流れてきたのか? 関門海峡を通ったということも考えられなくもないが、いったん南下して鹿児島をまわり、黒潮に運ばれてきたのかも。

そこから、古代の中国からやってきたという徐福の伝説が新宮に伝わっていることを連想する。不老不死の薬を求め、東方の海に浮かぶとされる蓬莱を目指した徐福。その徐福の伝説が、なぜ日本海側でなく、中国からみたら日本列島の裏側の紀伊半島に伝わるのか、不思議に思っていたのだが、こうしてみると不思議なことではなかった。もちろん徐福は風に吹き流されたのではなくて船を操ってやってきたのだろうが、海は、遠く離れた土地と土地を結びつけることを実感させられる。

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紀勢本線の鉄橋の下から海を臨む

三輪崎の海岸から峠ひとつ隔てた北側で、国道から徒歩で降りていくと、高低差は30メートルくらいはあって、そこは熊野古道だった。

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海辺の熊野古道

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阿須賀神社の背後にそびえる蓬莱山

新宮で徐福が到来したとされる蓬莱山は、熊野川右岸の河口にある小さな円形をした山だった。阿須賀(あすか)神社という神社の裏にそびえる格好で、登山道はない。

隣に歴史資料館があり、館員の人に解説してもらった。というか来館者は筆者一人しかおらず、親切にもガイドをしてもらった。徐福伝説は、ここ熊野のほか、佐賀県や、津軽、丹後地方など各地に伝わっているという。なぜ各地に伝わっているのか。海べりをめぐる人々のネットワークがあったのだろうか。

蓬莱山からは熊野三山の神や仏を掘った円形の浮彫が多数見つかっており、神仏が融合した信仰の対象となっていたことを物語る。鎌倉時代のものが多い。いろいろと海を越え山を越えてやってきた仏が、森の中でどんどん融合していくところに日本の聖地の特色があるようだ。

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神倉神社の岩

ところでせっかく新宮まで来たのだから、貝拾いだけして帰るのはもったいないと、駅前の駐車場に停めて、徒歩でまちなかを一周した。まるで春のような日差し。
節分で、熊野速玉大社で護摩木を炊く。3日後の夜には勇壮な松明の祭が営まれる神倉神社の石段を登った。滋賀県の長命寺の石段より、格段に荒々しく、上り下りは大変だった。


こうしてみると神社ばかりめぐっているようだが、いわゆる絶景ポイントや、気になる地形のところには、神社がある場合が多い。そういう場所は古代から注目されていたのだろう。
浮島の森(ここでも係員氏の名解説が聞けた)を見て、2時すぎに発、5時半に帰着した。

新宮市街を望む.jpg
新宮市街を望む

鈴鹿山脈の向こうに空は雲が厚く垂れこめるのが見え、山陽地方と山陰地方の境目をみるようだった。うららかな南紀の時間は幻のように思われた。
夕食は駅前の寿司屋さんで買ったさんま寿司と恵方巻。



posted by 進 敏朗 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以西) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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