2014年10月29日

カミノ/クマノ展

三重県立美術館に「カミノ/クマノ」展を見に行く。
熊野古道の世界遺産登録10周年を記念した展覧会で、同県出身若手作家5人、グループによる作品展示。

エントランスホール.jpg
三重県産ヒノキを用いた作品が広がるエントランスホール


エントランスホールに広がる切株とウッドチップの園は、グループ「ミエケンジンカイ」の作品で三重県産ヒノキ材を用いているという。会場の女性によると9月下旬の開幕直後はすごい木の香りだったという。その香りは1か月以上経って落ち着いていた。やはり展覧会は開幕直後に行くほうがいいんだなと思いを強くした。

紀伊山地の険しい山並みに、仏教や神道の信仰が融合した独自の景観。出展者のひとり渡部裕二氏の鉛筆画の巨大画面は熊野の奥深い山林に体当たりで挑んだ迫力が感じられた。
この水辺をテーマにしたブログと何の関係があるのかというと、けっこう水辺にちなんだ作品が多かった。

城戸保氏の写真作品には、海辺の錆びたトタン板や鉄柱の質感、あるいは虫食い状になった岩など、鮮烈な色や岩肌が潮風で腐食していくさまが油彩画の荒い筆致のようであるとともにどこか懐かしい海辺の情緒も感じさせた。
荒川朋子氏の油彩画は、山間を蛇行する雄大な川の流れをシンプルに描いた憩える絵画。川の堰堤とおぼしき段差を上から見た作品が印象深かった、それは筆者も川を見るとつい、魚がいないかなとそこに目が行ってしまうからだ。
もっとも興味深かったのは水野勝規氏の映像作品で、ここでは雨、海景、水面に浮かぶペットボトル、田植えの終わった田んぼ、山峡の村を覆うガス、滝など熊野における水の循環と人の振る舞いが描かれているようだった。中でも、浜と堤防、道路が高い場所から捉えられ、浜一面にビニールシートが繰り広げられている映像作品にはしばし見入った。そこは、筆者もことし1月に貝拾いに行った場所だった。車列や人、猛禽類が織りなすいろんな速度の掛け合いが見ていて飽きなかった。ヨーロッパのサンチアゴ巡礼終点の海みたいな、この地特有の海への信仰なのかと思ったら、そうではないことを係員の女性から教えられた。

会場風景.jpg
水辺が登場する映像作品の展示風景

ただ作品がひとつ故障しており見られなかった。それは水中カメラの映像を上から投影して、あたかも観る人が水中にいるような作品だといい水辺ファン必見だ。
再入場を許可してもらえたので、できれば11月24日までの会期末に再度訪れたい。

三重県立美術館では、若い現代作家を紹介する積極的な姿勢が見られて好感。
美術館の雰囲気もいい。津駅からも徒歩10分と近いが、滋賀県方面からだと草津線、関西本線、紀勢本線の接続がよくないのが難点だ。




posted by 進 敏朗 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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