2014年10月12日

浦見川

浦見川上流方向.jpg
三方五湖の久々子湖と水月湖をつなぐ浦見川

釣りに訪れた三方五湖・久々子湖と水月湖を結ぶ水道「浦見川」。
幅約20メートル、深さ2メートルくらいのこの川は、自然の水道ではなく、江戸時代に開削されたものであるという。
釣り竿をたたみ、東海自然歩道となっている久々子湖と水月湖の連絡路を歩いた。

切通し.jpg
切通しの道

約300メートル先の水月湖側まで、わきに浦見川を見ながらの気軽な散策路かと思ったら、予想以上に急坂になっており、切通しの道は高さ50メートルにまで達しているように思われ息が切れた。

水道.jpg
崖沿いの道から水道を見下ろす

浦見川の水路を挟んで両側はV字谷のようになっている。
坂下を見ると樹木の間に水路の緑色の水が見える。
あの岩壁を江戸時代の人夫らが切り開いたのか。

水月湖と観光船.jpg
水月湖をいく観光船

坂の頂上を過ぎると水路をまたぐ橋があり、橋の上から水月湖が見える。

福井県教育研究所の資料によると、浦見川の開削は小浜藩の郡奉行の指揮で1662年から始まり、順調に掘り進んだが、途中で岩盤が露出、難工事となり、京都から石工を呼び寄せ2年がかりで開通したという。

「一つとや ひとかたならぬ浦見坂」などと「浦見」と「恨み」をかけた数え歌もあったほどという。
やはりこの地名からは連想してしまうだろう。
藤子不二雄の漫画「魔太郎がくる」の主人公が「浦見魔太郎」だったことが思い出される。

しかし、浦見川はセイゴやハゼなどの好釣り場になっているので、筆者をはじめ釣り人は江戸時代の開削工事に恨みどころか感謝しなくてはいけない。

江戸時代までは、現在と違って水月湖→菅湖→久々子湖→海と水が流れており、水月湖と久々子湖はつながっていなかった。だが菅湖と久々子湖をつなぐ川が地震で隆起、分断されてしまい、出口を失った湖水は上昇、一帯の村は水没してしまった。そこで浦見川が開削された。菅湖と久々子湖をつないでいた気山川を深く掘りなおすのではなく、新ルートの水路開削に踏み切ったのは、気山川では勾配がほとんどないため、排水に限界があったのだろう。

水月湖と浦見川始点.jpg
水月湖と浦見川の始発点

浦見川の開削によって、三方五湖周辺の浸水がおさまったのに加え、新たに四百石の新田も生まれ、「生倉」「成出」という集落名は(コメが「いくら」でも「なるで」)という名付けといわれ、当時の人々の喜びや希望にわく気持ちが伝わってくるようだ。

浦見川下流方向.jpg
浦見川下流方向を見る。奥は久々子湖

落ち葉がたくさん流されてくる。
浦見川の掘削で久々子湖とつながった水月湖には、塩分を含んだ水が、水深のある水路を伝って久々子湖から逆流し、7メートルより深い部分は汽水なんだそうだ。

水月湖の最深部は38メートルあり、底にたまった塩分を含んだ水は比重が重いため表層との対流が起きず、2層の構造になっているという。
もともと、大きな流入河川がない静かな湖で、湖底には5万年分もの沈殿物の層が確認でき、世界の気候変動を知る基準資料となっているという。

水月湖の下層は湖底の養分分解で酸素を使い果たし、硫化水素が発生する「死の湖」。
上流の三方湖から水月湖へは淡水が送り込まれてくるが、淡水は塩分を含んだ下層の水とまじりあわず、ついに湖底まで到達することはない。

いっぽう琵琶湖は、最深部で100メートル以上あるが、厳冬期になると表層のほうが深層より水温が下がることで対流が生まれるのと、早春には姉川などから大量の雪解け水が流れ込んで「琵琶湖の深呼吸」といわれる現象が起き、湖底は無酸素状態を免れているのだそうだ。

淡水と汽水の比重の違いや、三方五湖の山で囲まれた独特の地形が生んだ水月湖の構造。
浦見川が掘られる以前は、「死の湖」ではなかったのだろうか。それでも結構、深くて川が流れ込まない湖の底は酸素が少なかったかもしれない。

河口と久々子湖.jpg
久々子湖に流れ込む気山川河口と砂州

ところで現在の気山川の河口も水道の約1キロ東にあり、訪れると白い砂で砂州が形成されていた。ヨシ帯もある。
砂は琵琶湖でも見られる花崗岩の真砂だ。

久々子湖河口の砂州.jpg
砂州が形作る模様

それは今年1月に訪れた中海の飯梨川河口にも似ていた。波静かで潮流のほとんどない湖にそそぐ川では、小規模な川でも砂が流されず、砂州が発達するようだ。
砂州の周辺は浅くて、ハゼがいるかなと思って見ていたが、クサフグの群れが見えた。
周囲に平地もあり川が流れ込む久々子湖は、水月湖とは対照的に最深部で2.5メートルの深さしかない。
掘り込まれた浦見川の水道は、同湖では水深のある場所でその意味でも良い釣り場のようだ。


posted by 進 敏朗 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以東) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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