2014年09月07日

水都と古生代の海(下)

金生山への道.jpg
崖の上に登山路が見える

大垣市北部の湧水池や小川を見た後、同市北西部の金生山(217メートル)にある「金生山化石館」を目指す。
この金生山はまるごと石灰岩で、いまから2億7000万年前ごろの古生代の海底が、そっくりそのまま残されているのだという。化石のメッカだが、石灰石鉱山として鉱区設定されており、産業用に掘り出されている。

石灰岩の石垣.jpg
石灰岩を利用した石垣

東側から山に近づくと、プラントが立ち並び産業感あふれる。
付近には、山の石灰石を利用した石垣や、寺院の奇岩石積み、邸宅には立派な庭石が見られる。大垣城の石垣にも、この石灰岩が用いられており化石も観察できるという。

岩トンネル.jpg
岩をくりぬいたトンネル

東側から近づいたがために、鉱石を運搬するトラックが行きかう産業道路に出てしまう。そこには岩の絶壁をくりぬいたトンネルがあった。入ると、その壁には、石灰の微粒子が風で吹き付けられて堆積した層があって何とも言えぬ風合い。マスクもないのであまり長居はできない。

トンネル壁の石灰粉.jpg
トンネル側壁の石灰粉の堆積

化石館へ行くには、このトンネルをくぐって左に曲がり、トンネルの上を横断する坂道を上がらねばならず、けっこうな傾斜で汗だくになる。
入場料100円。2階から入る構造で、高密度に化石が楽しめる館。貝類の夏季企画展示がされていたが、目が行くのは金生山産の化石の数々。

貝化石展示.jpg
化石展示の様子

海綿動物、棘皮動物(ウミユリなど)、軟体動物(貝類など)など多岐にわたる。生きた化石といわれる巻貝のオキナエビスに似た貝や、オウムガイなどがある。
化石のほか、石灰岩周辺の岩が熱で変成し色とりどりの結晶となった「スカルン鉱物」の展示も。

シカマイア化石復元模型.jpg
シカマイア復元模型

最も強烈な印象を受けたのはシカマイアという絶滅した二枚貝だった。
復元模型があったが、あまりの斬新さに古代の貝というよりは未来生物を思わせた。
名前はこの化石を研究した鹿間博士にちなんでいるという。

それはきわめて平たいスリッパのような形で、たて向きに割れ目の筋が入っている。断面は「く」の字を押しつぶした形が鏡合わせになっている。
もしシカマイアを海で捕ったとして、イワガキのように焼きシカマイア、あるいはシカマイア汁など食べようとしたら、貝柱とか、取り出すのに薄いたがねか何かで掻き出して食べねばならず、大きさの割に身が少ないのではないか。

その復元模型は長さ約30センチだったので、大きな貝だなと思っていたら、後で調べると幅80センチ、長さ2メートルもあったと推定されているので想像を絶する。これらは恐竜が絶滅した白亜紀の終わりにいなくなったとある。いなくて残念と思うとともに、ちょっとほっとしたような感も。

古代の海底復元模型.jpg
古生代の海の様子を再現

シカマイアは大量に存在していたらしく、金生山が海だったころの環境を復元したジオラマでは、多数が海底を這っていた。またはカキのように張り付いていたのだろうか。

楽しげな古生代の海.jpg
生態の想像図が楽しい

説明によると、この金生山はもともとが、赤道付近にあった浅い海底で、サンゴ礁のラグーンだったという。だが、その海にいたのはクマノミやチョウチョウウオなどではなく、シカマイア、ウミユリ、オウムガイ、三葉虫などの生物。魚類の化石は館では見られなかったが、想像図では古代ザメがオウムガイを襲う様子が描かれていた。
ちょっと武骨で愛嬌も感じられる海の仲間たち。

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金生山化石館前から登山道(北の方角)を見る

熱帯の浅海であった古生代の金生山は、太平洋プレートの動きとともに1億かけて太平洋を北上、1億6千万年前ごろ、大陸とぶつかり、大陸プレートにひっついた。そのときの圧力を受けて石灰岩となり、さらに1億年以上もかけて隆起してこのような山になったのだという。気の遠くなるような時間の営みだ。
この山は外国の研究者も訪れ、世界標準化石になっているようなものもあるという。

フズリナ化石.jpg
表の岩の表面にあったフズリナ化石

館を出て、そこらに転がっている岩の表面を見ると、フズリナの化石が認められた。
この石灰岩の地層が、浅い海底の生物の遺骸が積もってできたような地層なので、化石だらけだ。何せ人間による大量捕獲がない時代だから、生物の濃さは並大抵ではなかっただろう。

鉱山.jpg
鉱山

鉱区は入山禁止だ。どこかに化石採掘コーナーがあれば人気が出るのにと思う。

うれしいサービス.jpg
うれしいサービス

化石館から東側は、眼下に濃尾平野が開けていた。方や絶壁の岩山、方や勾配のほとんどない平地。この極端に異なる土地のありようは、両者の間に断層が走っており、山のほうはゆっくり隆起しているのに、濃尾平野の西側が沈降しているためといわれている。

地形の対比は、水平な田園での生きた淡水魚メダカやナマズと、垂直に屹立する岩山での海水古生物化石という、「水辺」を空間的にも時間的にも、まったく異なる位相から眺める体験となって興味深い。

濃尾平野.jpg
濃尾平野(東方向)を見る

化石館からさらに坂を上り、奇岩が並ぶと聞く明星輪寺を目指そうとしたが、時間の都合でこれも断念。
山を下りるとすぐに美濃赤坂駅に出る。石灰石を運ぶ貨物駅だった構内に現在は貨車はない。

美濃赤坂駅全景.jpg
美濃赤坂駅全景



駅構内から外へ.jpg
無人駅構内を抜けてホームへ

大垣駅まで戻ると駅前で催しがあり広々とした歩道のテーブルでビールを飲む。
すっかり満足し、午後の予定は割愛、余力を残して午後1時40分の電車に乗り帰路に着くと3時前に帰着した。

車窓ごしに見た金生山.jpg
車窓から見る金生山

夕食に餃子をつくったら、具材が柔らくて上から押しつぶしたような平べったい形になり、フライパンの底に並ぶ様子が海底のシカマイアを連想させた。




















ラベル:化石
posted by 進 敏朗 at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以東) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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