事故の影響でダイヤが乱れていたが新快速一本で滋賀から神戸に行けるのはありがたい。
チケット業者から購入すると、駅の運賃表示よりも驚くほど安くあがった。
さておき、会場の入り口に行くまでそれほど人が集まっている雰囲気は感じさせなかったが、展示室の入口で人の列になっていた。
そのため解説文もじっくり読む。
たいてい、展覧会の入口では渋滞するが、展示の後半は鑑賞の流れが足早になっていくためじゅうぶんなスペースができる。
もやがかかったような筆致が印象的なターナー。
けっこうな点数があり、有名な鉄橋を渡る蒸気機関車や蒸気船に曳かれる帆船の絵はなかったものの、それでも代表作のいくつかが見られた。
火災、なだれ、船の座礁など事故や災害を題材にしたドキュメンタリー風の作品もある。そうした事件が広がっている風景として眺めているかのよう。風景を描いた作品のタイトルは、「南西より望むオックスフォード」など、場所と眺めている方向がそのまんまとられている。
ところでやはり、というか、水辺が広がっている作品が多い。しかもいろんな水辺の表情が描かれている。
川、渓谷、湖、浜辺、干潟で潮干狩りらしき人、運河、港湾など多彩だ。
解説文を読むとターナーは釣り好きだったとうことで一気に親近感がわく。
歴史画では朝方の光のなかできらめく水面の場面が多いが、軍艦が出てくる絵では荒れた海が多い。
海辺でも明け方、夕方など時間帯、天候で変化する光の様子。
水彩のラフな色の塊だけで雲、雨、浜辺をスケッチした小さな紙が新鮮。
水辺が画面の真ん中や手前にあって、奥には山、古城、脇には巨大なエノキダケのような松の木。スケッチも膨大な量があり、多大な修練を経て後年のベネチアの光景ではタイトルに書かれた教会が建っておらず描かれているのは創造の産物だったりする。だけれどもその絵が高く評価されたと紹介されており、画家は風景に即しながらも現実を超えて理想の風景を作り出すのであった。
「絵になる光景」とはどんなものか考えるうえで興味深い展覧会だった。

〈おまけ〉似非(えせ)ターナー神戸海景写真