
八幡山ロープウェーから琵琶湖を望む(見えず)
近江八幡を訪れた。
近江八幡は滋賀県中部の街。旧市街地は、重要伝統的建造物群保存地区となっている。秋晴れの空の下、八幡堀は青く映え、同じ県内の湖南地域に住む人間からみるとやはり絵になるのであった。

絵になる八幡堀
ロープウェイで八幡山にのぼる。山上にある豊臣秀次の城跡に建つ村雲瑞竜寺は京都から移築された建物という。客間の畳の上に、円形の絵画作品が置かれていた。空から滴ってくる水のような池のようなたたずまい。床の間には、これまた星雲のような絵。地元在住の若手作家の絵画。顔料を絵の具に日本画の手法で描かれている。気配に耳を澄ます、空間との調和という点で、日本画の伝統を引き継いだ現代絵画といえるだろう。

旧貴賓室に配置された絵画作品
こうした絵が展示されて映えるのも、水のある景観の近江八幡ならではだろう。
近江八幡の周辺には、八幡堀や、西の湖など、水郷情緒あふれるスポットが多い。
そしてそういう場所には、この八幡山や、繖山など、あたりを一望できる小高い山もある。山、水辺、平野、町並み、こうしたものがわりとコンパクトに配置されているのが近江八幡周辺の土地の特徴だろう。
それに加えて織田信長や豊臣秀次といった戦国時代の歴史の物語もある。だいたい滋賀県ではそうした歴史ロマンの土地が多い。湖南地域あたりに住んでいると、案外そういうことに気づかない。

八幡堀をいく観光船
ということで、こうした場所に美術作品を並べると、場所のパワーというか気のようなものが共鳴して、よりおもしろく見えるということもあろう。
この日は、11月4日まで開催されている今回で5回目の「BIWKOビエンナーレ」を見に行く。
今回は初めて、東近江市となった五個荘でも開催されているが、それは翌日の11月1日に足を運ぶ。
そのせいか近江八幡の会場は随分とコンパクトになっていた。村雲瑞竜寺以外はインパクト不足の感否めず。

邸宅中庭の池跡
前回でも展示場所となっていた民家では、中庭の池に興味があった。
軒下に潜り込むように池が掘られている。これはおそらく、縁側に出るとコイが足下までやってくるという趣向なのだろう。
しかし、こんなに水気が多いと、家に湿気が相当来るだろうと思われる。夏とか、蚊がわかないだろうか。
現在は、空き家なので池は使用されていないが、水抜きが完全にできないらしく、池の深場には緑色の水がたまっている。
「蚊がわかないんですか」と会場のスタッフに尋ねると「さあ、わくんでしょうかね」と、関心の埒外の様子だった。
展示作品よりも蚊のことを尋ねるなんて失礼な客と思われたのかもしれない。
次の日、五個荘の会場を回る。
ここでも、水辺が気になって仕方ない。作品を見るのと、水路や池を見るのとが半々くらいであった。
こちらでは、近江商人の邸宅が現在も観光施設となっていることもあって、池には水が張られ、ニシキゴイや金魚が遊ぶ。しかし、鳥が来るのかネットが張られており、仕方ないとはいえ趣を削がれる感じであった。
そんな中、水田の鳥、サギに注目した作品に好感。近江八幡と五個荘の両会場で展示され「サギの飛来」を表現し、場所の広がりを感じさせた。

庭に飛来したサギのアート
五個荘では、水路が広くそこにもコイがいる。邸宅には、水量の豊富な水路から直接、水を引き込んで庭やカワトといって、野菜などを洗ったりする洗い場に引き込んでいたのだった。五個荘のカワトで以前、メダカの群れを見たことがあったが今でもいるのだろうか。

邸宅のカワト

駐車場に残ったカワトと井戸跡

集落で見かけた石垣水路トンネル
近江商人屋敷よりも、邸宅(五個荘では平均的に家のつくりが立派であった)に置かれた作品がおもしろかった。映像作品で印象深いものがあったが、写真に撮るのが難しい。風が吹き荒れて11月初旬としては寒い日だった。

神秘のジャングル風呂アート