
美術作品を展示している京都のギャラリー。水槽の中に、車のエンジンが吊るされている。これを稼動させるという作品だ。一辺が1メートルのアクリル水槽には、1トンの水が入っている。
その中でエンジンが動くはずであるが、中々かからない。「午前中は調子よかったんですが」と作者の美術作家氏。エンジンをかけようと操作するも、なかなか作動してくれず。かかりそうでかからないエンジンをまわしている様子が、ひとつのパフォーマンスのようであった。充満する排気のにおい。不整脈を打つ水中の心臓。バリバリと響く排気音。
30分たったころ、やがて、だんだんと水が温められてきたのか、ついにエンジンが作動した。冷却水の温度上昇し、もやもやと水の中。耳を当てると、ドゥルルルと小気味よいビートが伝わってくる。エンジン音を水を通じて聞いたのは初めての経験。
「水を隔てて間接的に操作するのは難しい」と、メカ操作には手慣れた様子の美術作家氏は話した。内燃機関でもこうであるのに、ましてや冷却水に囲まれた原子炉の制御はどれだけ難しいことであろうか。
このブログは「水辺」なので基本、自然系の話題となるが、いったん滋賀を離れみやびな京都を訪れると、このように環境にハードな非日常的水の芸術作品にも出会えるのであった。
考えてみると、筆者が訪れた水辺にしても家の近所以外、ガソリン車である自家用車の働きが欠かせない。
内燃機関と水が衝撃的に出会った作品は、そんなことも思い起こさせる。
〈國府 理 展「水中エンジン」 6月3日まで アートスペース虹=京都市東山区三条通蹴上西・都ホテル西隣〉