田を泳ぐニゴロブナの稚魚
滋賀県の田んぼでは9年前から、漁獲が減ったふなずしの原料ニゴロブナを増やそうと、水田への放流が行われている。湖岸に近い田をのぞくと、ミジンコ、オタマジャクシなどとともに、か細い稚魚が泳いでいる。これがニゴロブナ水田である。
かつて琵琶湖岸の田んぼでは、湖の水位が上昇すると、増水した用水路を伝って水田にフナやコイが産卵に来たという。ワタカという草食の魚もおり、水稲の苗を食われる被害もあったそうである。
それが、ほ場整備が行われた後、排水路が田よりも1b以上低くなってしまったので、よほどの増水時でないと魚が田に上がってくることは不可能となった。それで稚魚が育つ場所も少なくなり、フナの漁獲も減少した。そこに小魚を捕食するブラックバス、ブルーギルの外来魚繁殖が追い打ちをかけたのである。県は水産試験場でふ化させたフナやホンモロコの稚魚を琵琶湖に放流してきたが、それらのほとんどはバスやギルの餌食となるだけだった。
小規模な内湖でのフナ釣り
ニゴロブナの稚魚を放流した田んぼは今年、滋賀県全体で55ヘクタールにもなるという。今では、琵琶湖で漁獲のある二ゴロブナの3割が、水田放流の二ゴロブナということである。
かつて200トンも捕れたフナの漁獲量は、数年前の10トン台で底を打ち、回復傾向にあるという。
最近ではさらに、稚魚の放流をしなくても親魚がちょくせつ田にのぼれるよう、少しずつ段差を設けた魚道で水田まで誘導する「ゆりかご水田」も増えているという。そこに設けられた魚道は、ふだんは水は少ししか流れていないが、大雨の時は水が流れ、フナが遡上する。根が止水の魚であるブラックバスやブルーギルは、濁水をかいくぐって田にのぼる習性はないので、田の中はフナ天国というわけである。
5月に生まれたての稚魚は、6月半ばには、体長2〜3センチとなる。その頃、田では水抜きが行われ、フナは排水パイプを通じてドドドドと落ちていくのだそうだ。田で育った稚魚はエサが豊富の環境のため成長が早く、琵琶湖に戻った時にサイズがやや大きいので、捕食される率が下がるという。そして3年目の春には、体長22センチ以上の捕獲オーケーのサイズに成長するのだという。
このニゴロブナ水田は、特段ほかの田んぼと変わった点はなく、ふつうに稲が栽培されている。工夫といえば水抜きをするときに、フナが取り残されずに排水路に流下するよう田に溝をほるくらいだという。
水稲栽培のサイクルと魚が育つサイクルが、完全に一致しているのである。
水産業振興に田んぼが活用されるとは、まさに湖国ならではである。田んぼでは、海の魚やサケマスなどは育たないから。
良質なふなずし増産のためにもフナが増えてほしいものである。
泥川の亀船団


