三方五湖の眺望を目指す
雲谷山(下山後に撮影)
三方観世音の石段(午前9時ごろ)
福井県の雲谷山(786メートル)からは、三方五湖を眺めることができるという。
しかし、筆者のなまった体では700メートルもの高低差は難しい。
ただ、その眺めは頂上からではなくて、中腹の展望所から得られると知り、第3展望所まで登ることを計画する。
頂上まで行かずとも、途中で引き返すのもありとした低山めぐり。
山のルート図
雲谷山への登山は「三方石観世音」の駐車場に停める。
そこからまず本堂までの坂道や石段を登る。
境内に着くと盆梅展も開催し、春の情緒が高まっていた。
引き返しやすい3つの展望所
三方観世音の駐車場は海抜40メートルくらいの高台で、坂や石段を上り、登り口のある本堂の海抜は約80メートル。
そこからだいたい100メートル登るごとに、第1、第2、第3と展望所がある。出発後、疲労度をみて第1や第2展望所までで打ち切り、引き返すこともできる。
体力に自信がない人でも安心して入りやすい親切設計といえるだろう。
遊歩道の入り口
最初は間違って谷沿いの舗装路を行こうとしたがそれは林道であった。
遊歩道の入り口は三方石観世音の裏手にあった。
道は幅1メートルあって平らで歩きやすく整備されていた。
まずは第1展望所までなら、と行くが、この冬の間まったくの運動不足で、数分後にはハアハアと息が切れ汗が出る。
「もう帰りたい」と弱音が出た直後に視界が開け、第1展望所に出た。
第1展望所からの眺め
前方には木があったが、葉が落ちていて三方湖がみられた。
新緑となれば葉っぱで視界が遮られてしまうので、ちょうどよい季節に来れたかもしれない。
ベンチに座って休憩し、さらに先を目指すことにした。
第2展望所までの坂はもっと急で、立ち止まること数度。
慣れた人には何でもない坂かもしれない。
ドクドクと心臓が打って、体内に血がめぐる。
「雄滝→」を示す看板があり、音が聞こえたが確認できず。
疲労のため余裕がなかったせいもあるかもしれない。
しかし第2展望所までは思ったより距離はなく、ほどなく到着し休憩。
眺めの方角がやや北寄りになり、日向湖方面が見えた。
残された雪
さらに第3展望所を目指すと、坂はやや緩やかになり、歩きやすくなった。
だが両脚には疲労が感じられる。
春の陽ざしにわずかに残った雪が解けようとしている。
私の体内の脂分も、活発化した血流とともに溶け去ってほしい。
前方から、先行して出発したトレランの大人と子ども連れが戻ってきた。
すれ違いざまに
「頂上までですか?」と問うと、
「いやいや第3ですよ」と年配の男性が答えられた。
第3、私もです。同展望所での引き返しはそれくらい認知されているのか。
第3展望所に着いた
林道との合流地点があり、そこから坂を上ると山小屋出現。
ついに第3展望所だ。
ログハウス風小屋は回転式ノブがついた扉の部屋があった。
標高はおよそ380メートルで、山頂の高さの半分くらいの海抜だ。
上り始めからの高低差は300メートルくらい。
かかった時間は1時間ほどだった。
ふだん運動不足の人間には、相当ハードだった。
三方五湖の眺めは素晴らしかった
第2展望所からの眺め(午前10時ごろ)
第3展望所から眺め(午前10時半ごろ)
三方五湖の眺めは素晴らしかった。
行きの車中のラジオではPM2.5の影響が言われ、霞がかかっていた。
写真を眺めると、第2展望所からのほうが鮮やかに撮れている。湖までの距離が近いせいか。
しかし三方五湖の全景は、やはり高さのある第3展望所からのほうが眺めやすかった。
手前に菅湖、向こうには水月湖、そして右奥には日向湖と、その手前に久々子湖も一部望めた。
日向湖がいちばん青く見え、水月湖や菅湖は黒っぽく、そして三方湖は茶色かった。
湖ごと色が違うという様子を確認。
その奥には若狭湾が茫洋と広がっている。
菅湖に遊覧船が入ってきた
こちらの山は隆起しており、むこうの湖は沈降している。そんな地形の対比が感じられる。
こちらの山と、あちらの湖の間には、断層の動きが原因でできたとみられる平地が南北に開けており、そこに国道27号や舞若道、JR小浜線が走っており、車両の音も響く。
改造マフラーなのかバリバリと異常に大きな音が響くバイクは一帯に騒音をまきちらし、景観をだいなしにする。
北陸新幹線がもし小浜ルートとなれば、この平野を走ることになるだろうか。
水をいただく
第3展望所から少しだけ登山道を進むと標高400メートルくらいの小さなピークがあった。
しかし、木に囲まれて眺望が得られなかったため、ここで引き返すことにした。
杖を両手に持っているものの、下り坂で足が着地するたびももに衝撃が走り、疲労が大きい。
下山後、三方石観世音の名水で疲れをいやす。
天気もよくて、計画どおり登れたことにすっかり達成感。
杉の巨木が林立する境内を降りる
三方石観世音は信仰が篤く、奉賛者には隣接する滋賀県の高島市あたりの人の名前もちらほら見られた。
来年(2026年)の10月には、ふだん見られない摩崖仏が33年に一度のご開帳なのだという。
梅の花
一帯は名産の梅が咲いていた。2月から3月半ばまでの寒波の影響で例年よりも開花が遅れているようだ。
梅の香漂う菅湖の静かな湖畔の眺めにしばし見入り、引き上げた。