2023年10月01日

八幡湧水池(下)

岐阜県・西濃地方を代表するハリヨ生息地のひとつ、池田町の「八幡湧水池」を訪れ、ハリヨが実際にいることを確認した。
数はそんなに見られなかったが、いることはいたのでよかった。

池田町の平地に湧き出す水(現在はポンプであるが)は、元々濃尾平野が西側のほうが低くなっており、かつての揖斐川の本流が杭瀬川であったのと、西側にそびえる池田山の伏流水もあるためではないかと思われた。
周囲の地形を足で確かめようと、池田山のふもとまで湧水池から西へと歩く。

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平野の西にそびえる池田山(924メートル)

標高が900bを超す山頂は、しんどすぎるので、ふもとの公園を目指し、濃尾平野のひろがりを見た。
東向きの水に恵まれていそうな水田は良田ではないかと思ったが休耕田もあった。
平地が終わり坂道が始まるとその境目に集落があり、そこより上の緩斜面は茶畑。
そして坂が急傾斜となったところで登山道の入り口があり、奥は山林だった。田(平地)、集落、茶畑(緩斜面)、林(山)と土地利用がなされている。

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満開のヒガンバナ

濃尾平野を見下ろしながら、コンビニで買ったハンバーガーを食べた。水を飲む。
ここから下りて、天井川沿いの道を急ぎ足で東へ進む。

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柿色の揖斐行き電車

池野駅から、柿色の3両編成の電車で終点、揖斐駅へ。
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アユをかたどった揖斐駅看板

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終点だが、線路が奥まで延びているような

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揖斐駅の駅舎と、広々とした駅前

駅前から揖斐川の大橋へと幹線道路がつながっている。
まずさしかかったのが揖斐川支流の粕川であった。

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粕川の広い河原

池田山の西側の、伊吹山とにはさまれた山深い地域を源流とする川。
長さは18キロに過ぎず、揖斐川の支流でもそこまで大きいほうではないが水量豊富にして透明。
岐阜の川の迫力を感じた。

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シーズン終盤のアユ釣り客がいた揖斐川

そこから歩くこと数分にして、揖斐川の岡島橋に出た。
そこは堰のすぐ下流であった。河口まで56キロと表示もある。

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河口まであと56キロと表示する国交省の標識。

揖斐川の長さは121キロなので、源流まであと65キロ。
その長さは滋賀県最長の野洲川の源流から河口までとほぼ同じだが、やはり揖斐川のほうがだんぜん大きい。
それはやはり山の深さの違いによるものだろう。
揖斐川はこの大橋の上流がすぐに山地となっていて、山並みが迫っている。


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大きな堰がある 

山地が急におわって平地が広がるこの大橋の地点は、京都の保津川(桂川)でいえば、嵐山のごとき場所なのであろう。もっとも桂川では、保津峡の上流は亀岡盆地となっているが、揖斐川ではそれにあたる盆地が存在せず、どこまでも山深い地域のようだ。
さて、橋から川をのぞき込むと、水は思ったほど透明度はない。
上流に巨大ダムもあるというからこんなものなのか。清流への期待は外れた。

シーズン終盤の鮎釣りをする人が数人。透明度ではさきほどの粕川のほうがだんぜん良かったが、大きな鮎を狙うにはやはり本流か。
川の向こう側には揖斐川町の中心地があり、廃線となった名鉄揖斐線の終着駅がかつてあったのだが、そこまでは行かず引き返す。
揖斐駅前には観光センターもあって、自転車が借りられるほか、飲み物も。
沿線は平地なので自転車を借りて、サイクルトレインを使って周遊するのも楽しいかもしれない。

ローカル鉄道は、徒歩での旅に重宝する乗り物である。
この養老鉄道、線路幅はJRの在来線と同じ1067ミリであった。
先日乗った、大垣からふた駅だけのJR東海道線の美濃赤坂行き盲腸線は、そこからさらに貨物用の西濃鉄道が数キロ北まで線路を延ばしている。

そこで思ったがこの貨物鉄道を北へ4〜5キロ延伸させれば養老鉄道に池野駅あたりで行き会う。JR東海道線の美濃赤坂線と西濃鉄道、養老鉄道をつなげば、大垣を下端に、アルファベットの「b」を逆にしたような形の路線ができる。3会社の線路をつなぐことで、西美濃の平野にミニ周遊路線が描けるのではないか。などと空想にふけりながら大垣に戻った。

posted by 進 敏朗 at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以東) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

八幡湧水池(上)

再び西濃へ

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養老鉄道大垣駅ホーム


先日、岐阜県・大垣の美濃赤坂付近を探訪し、東海道線の線路近くの矢道川近くの湧水池を見たところ魚影が見られなかった。
トゲウオ科の魚、ハリヨが各地に生息するという西濃地域。だが、実態は厳しいものがあるのではないか。
そこで今回、西濃の生息地の中でも魚影が濃いという池田町・八幡の遊水池に向かうことにした。
大垣駅JRの改札を出、養老鉄道の揖斐行きに乗った。

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自転車の運び込まれた車内

電車は自転車の持ち運び可能な「サイクルトレイン」として利用されていた。
こうすれば自転車で行動範囲が広がるだろう。高校生などの通学の利用が多そうだった。

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池田山

5駅目の「北神戸(きたごうど)」で下車。
ここから池まで2キロ近くある。
コミュニティーバスは平日の決まった日しか運行されておらずこの日は運休。
池への距離は次の駅「池野」のほうが近いが、北神戸から歩き、湧水から南下する川の下流部にたどりついてから北上するルートを計画した。

京都盆地と似ている?大垣平野西北

西に向かって延びる農道のかなたに池田山がそびえる。
この光景、京都の大原野から見る西山の風景に似ていると思った。
地図で見ても、京都盆地と大垣の平野の西北部は地形が似ている気がする。

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湧水から流れ出る川(奥が下流=南)

歩くこと20分弱。遊水池から流れ出る川にたどりついた。
水量が多い。両側に鱒などの養魚場があってそこからも大量の水が排出されている。

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川の小魚

川には水草がたくさん生え、5センチくらいの小魚が浮遊している。
これはハリヨではないかと思ったが、すぐに隠れてしまい、写真も不鮮明なのでよくわからないがハリヨだったと思う。
先日の矢道川の池とは打って変わって、こんなにも簡単に確認できることに喜んだ。
池にいけばもっとたくさんいるのではと期待感が高まった。

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池への入り口が見えてきた

コンクリート堰のような構造物の向こうが池だ。

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小魚がたくさん泳いでいる

池は学校のプールを2倍か3倍にしたくらいの広さはあった。
全体に整備されていて、底には小石が敷き詰められている。
小魚がたくさん泳いでいて、ハリヨかと思ったらそれはカワムツのようだった。

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フナ泳ぐ

丸々とした10〜20センチくらいの泥色っぽい黒の魚も見え、フナの群れだった。
池は鳥よけの細糸やネットに覆われていて魚が食われる心配も少ないようだ。
それだけに魚は多かったが、見られたのはカワムツとフナだった。

ハリヨはどこに?

さて肝心のハリヨはどこに行ったのか。
先程の川でそれっぽい魚を見かけたので、池に行けばもっといるだろうとの予想は覆されようとしていた。
ハリヨが湧水に生息するからといって、水源に近づけばたくさんいるのかというとそうでもないのか。
池底を悠々と歩くザリガニを発見。ハリヨは大丈夫なのだろうか。

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池の水源

この池もポンプで水をくみ上げている。
その水源までたどり着いた。
水がわき出ている場所からやや離れた、水草の生えた場所あたりに、それっぽい小魚発見。

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ハリヨか(中央)

迷彩柄の模様が入った魚が緩やかに泳いでいる。
これは間違いなかろう。
近づくと逃げてしまうし、そんな望遠レンズは持っていないので、解像度に限界も。
そんなに繁栄しているようには見えなかったが、いちどに数匹が見られたので、案外水草の陰とかにひそんでいるのかもしれない。
とりあえず生息しているのは確認できてよかった。

しかしハリヨは池の全域にいるという感じではなく、池の中では水源近くに数匹が見られた程度だった。
何せ視力にそんなに自信のない素人の観察なので限界はあるが、池じゅうにぶわーっといるというような感じではなかった。

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ハリヨの生息地の比較

池入り口の休憩所に、ハリヨの生息地の1930年ごろと85年との比較図があった。
それによると、滋賀県側よりも生息地が多かった岐阜県側の西濃地域でも、生息地は激減したようだった。
1990年代以降、ポンプによるわき水の復活で、ハリヨの生息地復元の動きが各地であったが、維持していくのは大変なことだろうとあらためて思った。









posted by 進 敏朗 at 17:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 水辺を見る(滋賀以東) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする